地獄篇 第二歌 地獄への旅 [アート 文学 宗教]
”日は暮れかかり、夕霧がこめて、地上の人や動物は労働から解き放たれたが、
ただ私だけがこれから始まる旅路の困苦と、亡者に対する哀れみの苦悩を思うと、
次第に緊張が高まってきた・・・・
おお、詩の女神よ、おお、卓抜の詩の才能よ、今こそ私を助けてくれ・・・・
おまえの真価は今こそ発揮されるのだ。”
ダンテの心には、
「あの世の地獄を見てみたい、いや見て書きとどめなければならない」
という気持ちと同時に、迷いも生じ始めていた。
ここのダンテの複雑な内面描写も、次回どなたか挑戦していただきたい。ドレの絵では充分表現されていないので・・・
”「先生、先生は、私を導いて下さいますが、この険しい道に取り掛かる前に、
私の力がそれに耐ええるものかどうかお試しください。
あなたの御本によりますと、シルウィウスの父は、生身のまま永劫の国に行き、
じかに見聞をつんだという話です・・・
彼は、ローマと、その帝国の建国の父として、至高天で選ばれた方です・・・
ついで聖パウロもそこに行きました。救いの道のもとであるイエス・キリストへの信仰に対して、
そこから慰めをもたらすためでした。
しかし、なぜ私がそこに行くのですか? どなたのお許しがあるのですか?
私は、アエネアスでもないし、パウロでもありません。
私にそんな資格があろうとは、世間も私も思いもよらぬ話です。とするならば、
進んで旅に出てみても、旅路は狂気の沙汰となりましょう。
智恵者のあなたには、私の気持ちがよくおわかりと存じます。」
いま願ったばかりのことをもうやめて、別の考えに移り、はじめの一念はすっかり捨てた、
そうした人のように、あの暗い斜面で私は考えを捨てた。というのも思案するうちに、
はじめは飛びついた計画だったが、やめる気になったのだ。”
(写真)ある日の名古屋の夕暮れ
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