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天使と悪魔の美術戦略 1 [アート 現代美術]

 時代の変化の中で宗教が古くなったとき、大きなイノベーションが何度も起きています。
 マルクスやニーチェ、そしてダーウィン達も、時代の要請を背景に登場した存在ですが、彼らは「信仰や神」を疑うことでその声に応えました。

 「共産思想」のカールマルクスは、「ヘーゲル法哲学批判序論」(1843年)の中でこのように書いています。

「宗教は悩める輩のため息、心なき世の情であり、またそれは魂なき場の魂である。宗教は民衆の阿片である」

 哲学者のF.ニーチェはその「悦ばしき知識(1882年))の中で

 「神は死んだ。神は死んだままである。われわれは彼を殺した。殺人者の中の殺人者である我々は、いかにして自分を慰め得るか。」

と言っています。
 ダーウィンの進化論では「人間は猿から進化した」ことになってます。

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 彼らの発言は、当時の教会に対する人々の不満を代弁するものではありましたが、実際はそれに代わる答えを出せた訳ではありませんでした。
 彼らが出した答えは、彼らが批判していた教会の教えよりも内容は乏しく「暴力や力に訴えてでもこの世の権力を奪え」のような雑な考え方でしたが、それが《活字になる》と思いのほか広がって行き、その害悪も世界中に広がって行きました。
 それは《この世のものや力がすべて》という「唯物論」であり《神はいない》という「無神論」です。

 キリスト教国であるアメリカ合衆国でも、40%以上の人が「進化論」を信じているそうです。
 映画「インディージョーンズ 最後の聖戦」の中でのインディとインディーのお父さんのやり取りの中にも「信仰」を巡る新旧世代間のギャップが描かれています。

 《神がいるのかいないのか》という議論は、永遠にあると思いますが、宗教の基本は「有神論」です。《神無くして世界は無い》という立場です。
 それは《親無くして子供なし》の関係と同じだと言えます。人間や生命を生み出した存在がいるはずです。
 大きな流れとしては、美術の歴史は常にその立場に立ってきました。

 さて、この「現代美術」を考えるにあたって、「冷戦」の中でアメリカが果たした「軍事的」役割はかなりあると書きました。
 その先兵はポロック氏でありデュシャン氏でした。彼らはアメリカに使われた存在で、彼らが「現代美術」を作ったわけではありません。

 そのアメリカが、どのようにして「ヨーロッパ美術を徹底的に粉砕、否定」して行ったか、ということが、実際のアメリカ議会の報告として公表されています。

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文化の戦争  

 これについて書かれた部分をウィキペディアから引用します。

冷戦下のCIAの美術工作

抽象表現主義は、冷戦下の政治の力の側面支援を受けたとも見られている。 抽象表現主義は50年代前半、思想戦・情報戦の武器としてCIAの関心を引くところとなった。東側諸国との冷戦のさなか、CIAは抽象表現主義の美術家や批評家を援助し世界に広めることにより、アメリカには「思想の自由」と「表現の自由」があり、政治・軍事・経済だけでなく文化面でも大きな成果を成し遂げたという証明にできると考え、ソビエト連邦の芸術や文化の硬直性に対し有利に立てると考えた。 アメリカや主にヨーロッパを中心とした進歩的文化人など、世界中の文化人に対するソビエトの影響力は圧倒的で、アメリカは哲学や芸術の世界では常に悪役であり劣勢にあった。この劣勢に対し、CIAは美術も含めたアメリカの芸術の自由さと斬新さ、先端性をアピールすることで、文化人に対するソビエトの影響をそぎ、アメリカの影響を高めようとした。また西洋の芸術のモダニズムや前衛の成果や運動は、今やアメリカの美術界が引き継いだと証明するために、抽象表現主義とその理論が利用された。こうして抽象表現主義は、「冷戦下の文化戦争の尖兵」となることになる。

(続く)

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