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あいちトリエンナーレ2019 3 [アート 現代美術]

 ところで「あいちトリエンナーレ2019」では、「表現の不自由展」を巡って展覧会が「炎上」したのですが、美術の歴史では、このような「炎上商法」の起源は1917年に遡ります。

 それはロシア革命の年でした。
 「現代美術」の教祖的存在でカリスマでもあるフランス人芸術家マルセル・デュシャンが、新興国アメリカのニューヨークのアンデパンダン展でやった「自作自演の展示騒動」がその走りでした。

 彼は一定の会費を払えば誰でも自由に作品を2点出せるアンデパンダン展に男性用の「便器」を出品しました。
 主催者側が「それはダメだ」と拒絶すると「待ってました」とばかり「表現の自由の侵害」として騒いだのです。

250px-Duchamp_Fountaine.jpg

泉 マルセル・デュシャン 1917

 まだ今よりモラルが厳格な保守的な時代でした。
 《展覧会に便器を出せばどうなるか》が分かってやった「自作自演の炎上商法」です。しかし実は「便器」を拒絶したことになっている主催者側の一部もその演出に一役買っていたようです。

 「あいちトリエンナーレ2019」の事件で真っ先に思ったのはデュシャン氏のこの騒動でした。

 デュシャン氏は、この「自作自演の炎上事件」によって、のちの美術史の教科書に載り、「現代美術」の父としての尊敬を受けて行きます。
 そういうことがあるので、この「あいちトリエンナーレ2019」の騒動は、皮肉にも「現代美術史」的には伝統的な手法に沿ってなされたものだと言えます。

 この人がマルセル・デュシャン氏です。
 先ほどの「自作自演の炎上商法」をやった人です。女装したりして、ちょっと???なところがある人です。

250px-Marcel_Duchamp_01.jpg

マルセル・デュシャン

 「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展」で、《慰安婦像を思わせる「平和の少女」を出したことで「悪魔がしっぽを出した」》と私は書きましたが、それはこのデュシャン氏と関係があります。
 彼を有名にしたもう一つのものは、

 「絵画は終わった」

という言葉です。
 1912年、友人のピカビアと一緒にパリ郊外の航空ショーに行ったデュシャン氏は、そこで美しく造形された飛行機のプロペラを見て

 「絵画は終わった。いったい誰がこのプロペラ以上に美しいものを作れるっていうんだ?」

と言ったそうです。  これは、のちの「レディメイド」の概念に通じる言葉として美術史に記録されています。
 この言葉は「絵画」というよりは「美術」の意味だったと思います。

 しかしその奥にはもう一つ深いものがあったと私には思われます。



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