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「現代美術」地獄 [ドイツ ケルン 地獄絵]

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ミケランジェロ 「最後の審判」より バチカン・システィナ礼拝堂

 僕がドイツのケルンに住んでいたのは、今からもう20年近く前の話だ。1989年春から94年にかけてである。
 ケルンは当時、ニューヨーク、ロンドンとならぶ「現代美術」の中心地だった。

 「現代美術」は、僕にとって地獄だった。
 しかし、その地獄の中でどうやって生きていこうかと考えていたのが、ケルンに住んでいたときだ。
 それは地獄と言うより「不毛」といった表現の方が正確かもしれない。
 「現代美術」の世界では、僕が良いと思っている価値観は、ほとんどすべて否定されていた。
 ミケランジェロ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、そしてダンテの「神曲」などのルネッサンス芸術は、”乗り越えられるもの”というよりは、むしろ”無視すべきもの””否定すべきもの”として扱われる傾向があった。

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アド・ラインハルト 「抽象絵画」1960-66 川村記念美術館

 そこでは、こういう絵が「素晴らしい」とされていた。これは「現代絵画」の古典的作品である。この絵は、画像のミスではなく、一面グレーに塗られている抽象絵画だ。

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ジャクソン・ポロック「No.5,1948」1948

 またこれは、現在までに、市場での最高価格の約163億8000万円という値で取引されたアメリカのジャクソン・ポロックの抽象画だ。 (2006年6月)

 これらの絵画が、ピカソやマチスなどのヨーロッパ絵画よりも、時に高い評価を受ける世界が「現代美術」という世界であった。
 ところで、前項で紹介した シュテファン・ロッホナーの絵の部分と、J.ポロックの抽象画が、どこと無くダブって見えるのだ。これは、僕の中にまだ残っている「現代美術」に対する恨みの念がそう見せているのかも知れない。
 この部分では、僕ももう少し心の浄化が必要かもしれない。
 
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ケルンの地獄絵 その2 [ドイツ ケルン 地獄絵]

 シュテファン・ロッホナーの絵の細部。
 面白い、と言っては不謹慎かも知れないが、実物を見たときは、怖いとか、気持ち悪いと言うより、「面白い」という感じが強くした。一緒に見たドイツ人も似たようなことを言っていた。

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真ん中の男を、天使と悪鬼が奪い合っている。
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奥の方に見えるターバンを巻いた人々は、やはりイスラム教徒だろうか。
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右側の怪物は、とても人々を襲っているようには見えない。涙を流している。むしろ同胞に助けられようとしているか、または逆に責められているか・・・・

 ドイツ人の彼にとっても、このような絵は、僕らが仏教的な地獄図を見るのと同じような感じで、「面白い、こんなの始めて見た」というのに近い経験だったようだ。彼の周辺の人たちが、先ほどの理由から、宗教離れを起こしていて、日常的にこういうものを見る機会が無くなっているのだ。
 僕の知る範囲では、彼らはこういう絵を見ても拒絶反応はしない。彼らが嫌っているのは、地獄という存在ではなく、すべての人を「罪人」と見なすような考え方、特にキリスト教の「原罪」という「思想」に対してなのだ。罪がある人間が、死後地獄に行くという話は、彼らも納得はする。
 しかし、罪もない人間であっても、「人間である事がそもそも罪である」というキリスト教の考えに対しては、納得もしないしそんな教えに係わりたくもない様子だった。
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ケルンにも地獄絵が・・ [ドイツ ケルン 地獄絵]

 さらにまだまだたくさんの地獄の絵がある。

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最後の審判 板に油彩 1435

 シュテファン・ロッホナー(Stefan Lochner, 1400-1451)は、ゴシック後期にケルンで活躍した画家だ。

 僕が、1989年にケルンで住み始めた時、ライン川のほとりにある美術館で、この作品を見た。
 当時、「現代美術」に関心があり、古典絵画はほとんど興味がなかったのだが、この作品や、それ以外のキリスト教系の作品には強い印象を受けた。
 しかし、全体に共通するあまりのグロテスクさに、「ちょっとやり過ぎではないか?」とも思った。
 美術館には、イエス・キリストの悲劇性を強調しすぎている表現が多かった。僕が付き合ったドイツの人の多くは、「カトリックは牢獄だ」とはっきり言っていて、その教えをとても毛嫌いしていたが、その理由は「あなた方は罪人である」という教えにあるような気がした。
 

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