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三人の女神のはからい [アート 文学 宗教]

 
 ”私は、天国でも地獄でもない連中といたのだが、清らかな美しい女性が私を呼ぶので、伺い出た。

 その方の両の目は、星よりも明るく、さわやかでゆったりとした天使のような声で私に話すのだ・・・・

 『私の友で運のない人が、人気のない浜辺で、猛獣たちに道をふさがれ、もと来た道を引き返そうとしています・・・

 もう手遅れなのでは・・・さあ急いで、あなたの雄弁で彼を救ってやってください。

 私はベアトリーチェ。愛に心動かされ愛により申し上げます、どうか彼を救ってやって・・・・・』 ”

 ベアトリーチェによると、最初にダンテを哀れに思ったのは、彼女よりもさらに天国の上の方に住まわれているマリア様だった。
 マリア様が、”人生の半ばで、正しき道を踏み外してしまったダンテ”を救おうとして、その愛の思いをかたわらのルチアへ伝え、それがルチアを通してベアトリーチェへ、そして最後にヴェルギリウスへと伝わったのだ。

 ”こうして私はおまえのところに来た。

 さあどうする? 何を迷う? このような祝福されたお三方が、

天上にあっておまえを心配して下さっているのだ ・・・”

 その言葉を聴いて、ダンテは、

”夜の冷気にあたってしぼんで頭を伏せていた小さな花が、

お日様が出るときらきらと光り、

みな頭をもたげて茎の先に花開くように”

”私を助けてくださった情け深いお方・・・

 あなたのお話を聞いて、行きたい、という気持ちが強く心に湧きました。

 最初の決心に戻りましたから、さあ行きましょう。”

 そう言ってダンテはヴェルギリウスのあとについて陰惨な地獄への旅に踏み出した。

 実は、堕落し絶望したダンテを救うには、”本当に堕落して死んだ者たち”が地獄で苦しむ姿を、生きているダンテに見せるしかない、というのが、女神たちの考えだったようだ。
 そして文才があるダンテに、その様子を書かせ、それを人々への警告と啓蒙の書とする、という考えがより深いところにあったわけだ。

聖母マリアが、ルチアを通してベアトリーチェに思いを伝えるこの場面は、G・ドレも描いていません。

Leonardo_da_Vinci_027[1]s.jpg
レオナルド・ダ・ヴィンチ「岩窟の聖母」 天使はウリエル

Francesco_del_Cossa_016[1]s.jpg
聖ルチア、フランチェスコ・デル・コッサ画。
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