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ケルンの地獄絵 その2 [ドイツ ケルン 地獄絵]

 シュテファン・ロッホナーの絵の細部。
 面白い、と言っては不謹慎かも知れないが、実物を見たときは、怖いとか、気持ち悪いと言うより、「面白い」という感じが強くした。一緒に見たドイツ人も似たようなことを言っていた。

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真ん中の男を、天使と悪鬼が奪い合っている。
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奥の方に見えるターバンを巻いた人々は、やはりイスラム教徒だろうか。
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右側の怪物は、とても人々を襲っているようには見えない。涙を流している。むしろ同胞に助けられようとしているか、または逆に責められているか・・・・

 ドイツ人の彼にとっても、このような絵は、僕らが仏教的な地獄図を見るのと同じような感じで、「面白い、こんなの始めて見た」というのに近い経験だったようだ。彼の周辺の人たちが、先ほどの理由から、宗教離れを起こしていて、日常的にこういうものを見る機会が無くなっているのだ。
 僕の知る範囲では、彼らはこういう絵を見ても拒絶反応はしない。彼らが嫌っているのは、地獄という存在ではなく、すべての人を「罪人」と見なすような考え方、特にキリスト教の「原罪」という「思想」に対してなのだ。罪がある人間が、死後地獄に行くという話は、彼らも納得はする。
 しかし、罪もない人間であっても、「人間である事がそもそも罪である」というキリスト教の考えに対しては、納得もしないしそんな教えに係わりたくもない様子だった。

ケルンにも地獄絵が・・ [ドイツ ケルン 地獄絵]

 さらにまだまだたくさんの地獄の絵がある。

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最後の審判 板に油彩 1435

 シュテファン・ロッホナー(Stefan Lochner, 1400-1451)は、ゴシック後期にケルンで活躍した画家だ。

 僕が、1989年にケルンで住み始めた時、ライン川のほとりにある美術館で、この作品を見た。
 当時、「現代美術」に関心があり、古典絵画はほとんど興味がなかったのだが、この作品や、それ以外のキリスト教系の作品には強い印象を受けた。
 しかし、全体に共通するあまりのグロテスクさに、「ちょっとやり過ぎではないか?」とも思った。
 美術館には、イエス・キリストの悲劇性を強調しすぎている表現が多かった。僕が付き合ったドイツの人の多くは、「カトリックは牢獄だ」とはっきり言っていて、その教えをとても毛嫌いしていたが、その理由は「あなた方は罪人である」という教えにあるような気がした。
 

神曲とボッティチェッリ [アート 文学 宗教]

 さて、もう一人同時代の画家で、地獄絵というよりも、「神曲」そのものを描いている画家がボッティチェッリ(1444-1510)だ。

 彼は、ダンテの「神曲」の絵を90点描いている。メディチ家から依頼されたらしい。そのほとんどがスケッチだが、まとまった「神曲」の絵としては、G.ドレ、W.ブレイクについで多い。

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サンドロ・ボッティチェッリ 神曲 地獄篇第18歌

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サンドロ・ボッティチェッリ 神曲 地獄篇第19歌

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サンドロ・ボッティチェッリ 神曲 地獄の構造

 イタリア発行のユーロ硬貨に、ダンテ(ラファエロ画)とボッティチェッリのビーナスの誕生が使われている。(硬貨の裏面は、各国独自のデザインがされている)

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ダンテは2ユーロ ビーナスの誕生は0.1ユーロ


地獄絵といえば・・・ボッシュ [アート 文学 宗教]

 前項で、「行ってみたい!」と思ったイタリア中部の町オルヴィエートは、実際は15年前に行っていたのを思い出した。
 その頃、僕はドイツに住んでいて、イタリアにもよく遊びに行っていた。トスカーナとウンブリアをよく訪ね、たしかこの町にも来た。夏の暑い日だったが、見晴らしのいい高台で、おいしいジェラートを食べながら風に吹かれていた記憶が蘇ってきた。

 しかし、肝心のシニョレッリの絵は見なかった。というか、まったく知らなかった。
 今は、絵を描く事、絵が描けることに幸福感を感じているが、当時は「美術の世界で生きていくことは果たしてできるのだろうか・・・」と疑問や不安を感じていた。

 さて、土佐光信、シニョレッリと同じ時代の画家としては、ボッシュ(またはボス)という有名な画家がいる。
 ヒエロニムス・ボス(Hieronymus Bosch/本名:Jeroen van Aken、1450-1516)
 地獄絵において、彼は忘れてはならない画家だ。

Hieronymus_Bosch_-_The_Garden_of_Earthly_Delights_-_Hell[1].jpg
Hieronymus_Bosch_045[1]s.jpg
快楽の園(1480年 - 1500年頃)(プラド美術館)




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